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第一章
磨きあげた技術は、瞬きのうちに燃え尽きる。
狂気を煽る閉ざされたセカイ。
その瞬間、視界は静かに凍りつく。
喉にまとわりつく赤色の味。
肺に充満する錆の匂い。
研ぎ澄まされたナイフは、肉体より意志を削ぎ落とす。
弛む筋肉。
流れる臓腑。
その屍によって救われる、血と肉と心臓の拍動。
赤色に染まった顎をして、その腕で築き上げた死を啜る。
狂気を纏い、死に追いすがり。
死を取り込んで、生にしがみつく。
軋む骨。
焼き切れる神経。
異常なまでに張り詰めた筋肉。
──そして僕は、頭の中で《何か》が崩れる音を聴いた。
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