第1章

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1 「クリスマス事件」と呼ばれる、世にも奇怪な密室殺人事件が起こったのは、あの「謎の失踪事件」が解決された年のことだった。 僕はこれまでに、多くの密室殺人事件に遭遇したり、探偵小説を読んだりして、密室のあらゆるパターンに熟知しているはずだった。 だが、この事件を捜査して行くうちに、それは思い上がりもはなはだしいと悟るようになった。 もし僕がその時、原点にかえるという謙虚な気持ちを思い出さなかったら、この事件を解決することは出来ず、迷宮入りの一つとして、汚点を残していただろう。 12月24日、月曜日の朝だった。 僕はE・C・ベントリーの「トレント最後の事件」を読んでいた。
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