Chapter1《空っぽな心を癒したのは…》

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Chapter1《空っぽな心を癒したのは…》

「優芽ー!起きなさい!遅刻するわよ!」 朝から二階に響くお母さんの声。 正直、今の自分に誰も触れてほしくなかった。 家族の声まで、今じゃ聞くだけで苦しくなってしまう。 「………嫌だ」 私は子供みたいな言い草をぼそっと呟く。 そして、殻に閉じこもるように布団に潜った。 廉くんに別れを告げられたあの日以来、私はずっと家に引きこもるようになった。 他の人からすれば、「彼氏にフラれたぐらいで引きこもるのか」なんて思うのかもしれない。 けど、私からしたら、幸せをくれた大事な人が突然、…遥か遠くへと消えたようなものだ。 「…優芽、大丈夫?今日も休む?」 心配して二階に上がってきたお母さんが、ドア越しからそう訊ねる。 ここまで心配させておいて、何て親不孝な娘なんだろうと自分を責めたくなった。 「………………ごめん、今は…、誰にも会いたくない」 「…母さんの顔を見るのも、嫌なの?」 泣きそうな訴えの後に、お母さんが悲しそうな響きが混じった声音でそう言った。 私は思わずベッドから飛び起き、ドアを思い切り開いた。 そこには、安堵の表情を浮かべるお母さんの姿があった。 「…やっと出てきてくれたね。大丈夫よ優芽。母さんは優芽を親不孝な娘だなんて全然思ってないから」 そう言って、私を優しく抱きすくめる。 もう、抑えきれない。 涙と一緒に、感情が零れた。 「…ご、め…っ、なさ…いっ!ひっ、っく、お母、さ…んっぅぁあああ…っ!」 止まらなくなるほど、お母さんを抱いて私は泣き叫んだ。 固く閉ざしたままだった心が、温かい温もりで解かれていく感覚を覚える。 私は、お母さんの存在がどれだけ大きいかを改めて知った。 そして、廉くんが私にどれだけ幸せな時間をくれたのかを…。 なおさら感謝しなきゃいけないのに、目の前にある事実から逃げていた事を恥ずかしく思う。 ーぐぎゅう… 「………ぁっ」 「あははっ!優芽の胃袋は正直ねぇ。朝ご飯、食べよっか?」 「……う、うん」 疲れていたのか、考えていたら空腹の音が鳴り響いた。 お母さんは笑いながらキッチンに行って作った朝食を温め直していた。 我ながら、このタイミングでお腹の虫が鳴った事に呆れてしまう。 私は部屋を出て、朝食を食べにダイニングへ向かった。
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