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「うそ、でしょ…。あれは…、演技、してた…?」
「………ゆ、ゆめ?」
息が止まってしまったように苦しい。
何で、そんな事をしたの?
どうして何も言ってくれなかったの…?
今までの記憶と廉くんの顔が、頭の中で騒いで、混ざり合った。
「……あぁ、あ…っ!」
「…っ!待ってゆめ!!」
気がついたら、教室から飛び出していた。
走った先は、思い出の桜並木。
桜を見つめながら、涙がぽろぽろ溢れて止まらない。
もし林花の話が本当だとしたら、廉くんは心臓病にかかっている事を知られないために、わざと別れを告げた事になる。
私のために、廉くんは遠い国へと旅立った。
辛い思いをさせたくないから…。
自分のせいで苦労する私を、見たくないから……。
「…いよ……、ずるいよ…っ、廉くん…!」
桜の木の前で泣き崩れ、今はアメリカにいる廉くんを想う。
どんな思いで、「別れよう」って言ったんだろう。
悲しい。悲しくて堪らない。
桜の花びらがそれを憂うかのように、儚く散っていく。
ねぇ、廉くん。
教えてよ…。
この気持ちはもう、捨てるしかないのかな……。
その答えは、廉くんも分からないかもしれない。
ただ、廉くんにまた会いたい気持ちは、本当だった。
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