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「ほら。レモンティー」
「…………すみません」
どうにか泣き止んで落ち着いた私に、先輩は購買のレモンティーを買ってくれた。
レモンティーの優しい甘酸っぱさが、心を癒やしてくれる。
先輩に、お礼を言った。
「別にいいよ礼なんて。逆に俺らバスケ部が美乃谷に良くしてもらってたからな。…ほら、よくレモンの蜂蜜漬け差し入れてくれただろ?あれがチームの勝利に貢献してくれてたんだ」
「……え?あの、レモン漬けがですか…?」
ただ頑張って欲しいと思って差し入れただけの、あのレモン漬けがそんな大業を成し遂げていたなんて知らなかった。
けど何故か、ちょっぴり嬉しくて照れる。
「そう。チームの間では魔法の蜂蜜漬けなんて通ってて、蜂蜜漬けが差し入れられる度にあいつら喜んでたよ。中には美乃谷と付き合いたいって騒いでたヤツもいたな、そう言えば」
「…えぇっ!?」
「でも、廉がそれを聞いてそいつをシメてたぞ?『俺の優芽に手ぇ出したらタダじゃおかねぇ』ってな」
そう苦笑いして言っているけれど、廉くんからしたら本気だったかもしれない。
あんな別れ方をしたけど、大切にしてくれていたんだって思うと、嬉しい気持ちが込み上げて尚更会いたいと想いが募っていく。
本当に、自分は心が弱い。
「美乃谷」
「は、はいっ」
「…お前、やっぱ何かあったんだろ。話してくれないか?」
先輩が真剣な顔つきで、私にそう言った。廉くんの話をしたら、先輩はどんな反応をするのだろう。
どう言えば良いか分からず、口ごもる。
「いや、あの……」
「俺は…、美乃谷が心配なんだ。ほんの一部だけでも構わないから。……美乃谷には、笑顔でいて欲しいんだよ」
先輩が、こんな悲痛な顔しているのを初めて見た。
学校でも、部活でも決して見せない、先輩の素顔…。
話さなければ、先輩が辛い思いをわざわざしなきゃならなくなってしまう。
声を絞り出して先輩の名を呼び、打ち明けた。
「…先輩。私、廉くんと別れました」
その時の先輩は、初めて知る事実に驚きつつも、廉くんが転校したのと私に関係があると悟り、全てを知った。
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