Chapter3《揺れる想い》

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「美乃谷、お前………っ!」 先輩は言葉を失って、私を見つめる。 廉くんはどうやら、先輩に自分が心臓病である事もアメリカに行く事も、話してなかったらしい。 今じゃ元カノになった私が、元カレの話を先輩にしなければならないほど皮肉なものはない。 先輩の目に、私の顔はどう映っているだろう。 その瞬間に、私の体が先輩に抱き締められていた。 いきなりの出来事に、思わず動揺してしまう。 「せ、せんぱ………っ」 「………っと」 「…え?」 「……ずっと、辛かったんだな…」 「…………っ!!」 廉くんが言っている訳ではないのに、先輩の一言が優しく癒やしてくれている。 不思議と、涙が溢れていた。 「先輩、どうして……?」 私がそう聞くと、先輩は濡れた瞳を向けながら答える。 「…俺は、ただ純粋にお前の笑顔が好きだった。いつの間にか、美乃谷に夢中になってたんだ。けど今の美乃谷には、陵宮がいる。あいつにとって、美乃谷はかけがえのない存在だったから」 穏やかなその声は、叫びにも聞こえた。 廉くんに大事されていたのに、先輩を放っておけなくなるのは何故だろう。 お互い迷っている。 この迷宮から永遠に抜け出せなくなると、私は感じていた。 「美乃谷。しばらくこのまま、こうしててもいいか…?」 「……先輩…」 廉くん。 あなたは、異国の空の下でどうしてるの? 無意識に、廉くんの気持ちが変わらないようにと祈っている自分がいた。
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