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「…………はっ?嘘、だろ…?」
目の前の事実に、俺は受け入れられない。
何でだよ。
どうして俺が…。
「今言った通りだ。お前は先天性の心臓病で、すぐにでも手術しないと助からないほど危ない。だから、………父さんと一緒にアメリカへ行こう。お前が心配なんだ」
「……………んでだよ」
「廉……?」
ぼそりと呟いた俺に、親父が心配そうに声をかける。
俺は…、今にも零れそうな涙と一緒に全てをぶつけた。
「何で……っ、何で俺なんだよ!?今は何もかも順調なのに…、大切な存在も出来たのに…!みんな捨ててかなきゃいけねぇのか!?たかが心臓病で!?……ざけんなよ。ふざけんなよッ!!」
「………廉!父さんは…」
「うるさい!俺を今までほったらかしにしてたくせに今さら父親面すん、……っ」
胸に尋常じゃない痛みが走り抜けた。
息も出来ない。
そのまま、俺は倒れ込んだ。
「廉!?しっかりしろ!廉!!」
親父が叫んでいる。
声が枯れて、かすれるまで。
死ぬのか………?
《嫌だ。死にたくない》
もう、何もかもどうでもいい。
楽になりたい。
《残された皆は?親父は?……優芽はどうなる?》
…………優芽?
考えてもなかった。
あいつは、あいつには、悲しい思いをさせたくない。
いらない荷物を背負わせる訳にはいかない。
だから…………
その後、俺は病院に運ばれ、入院している間にアメリカへ行く事が決まった。
俺の同意も含めて。
そして、優芽の家に行って俺は別れを告げた。
『どう、して……?私、廉くんに何か嫌な事した?』
……いや、してないよ。
俺が悪いんだ。
『待って……っ!行かないで廉くん!!』
ごめんな。
こんな勝手な男で…
『…………ぅあぁあああ……!』
ドア越しから聞こえる君の泣き声。
こんな勝手な理由で傷つけた上、俺は君の前から去る。
頬に一筋の、涙が伝わったまま……
さようなら、優芽…。
ごめんね。そして
――――――――――……『ありがとう』
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