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異国の空の下で Side,廉
「Hey Ren,how are do in today?」
「あ、えと…、あいむ」
「so-soデショ?Sorry,チョットカラカッテみたくなって」
「…日本語、ペラペラなんだな」
「Talkingは少シニガテだケド、3年JapanにイタカラRenがナニヲ言いたいノかワカルの。何かあったラNurse call鳴らしてネ♪」
「…せ、Thank you,Emily」
「フフッ。Have a nice day」
アメリカのマンハッタンにある病院。
優芽と別れた俺は心臓の手術をするために、アメリカへ親父と引っ越した。
親父は勤めていた会社のマンハッタン支部へ異動という事になり、出勤に関しては差支えないらしい。親父は俺のためにここまでしてくれたのに、アメリカへ行く事を告げられ倒れたあの日、本当に酷い事を言ってしまった。
親父はいつもと変わらず笑いながら「大丈夫だ」なんて言っていたけど、きっと悲しい気持ちになっているに違いない。
「何で、こうなったんだろうな…」
そう呟いて、涙が零れた。
病室は音のない世界と同じで、俺の心音を知らせる機械が虚しい音を響かせているだけだ。いつの間にか、俺は涙もろい男に成り果てていた。情けない。優芽に余計な荷物を背負わせたくないと何の罪もない彼女に八つ当たりな言い方をして出て行き、このザマだ。
「…ごめん、ごめんな…っ」
声を押し殺しながら泣いても、少し嗚咽が漏れる。こんな半端な覚悟で優芽を手放した代償があまりにも大きい事を悟った俺は、大切なものを呼び戻すかのように、ただ泣く事だけしか出来なかった。
「…Your,crying?」
不意に声が聞こえ、目の前に金髪の女の子が立っている事に俺は気がついた。
七歳。いや、十歳ぐらいだろうか。
ピンクの水玉のパジャマに白いヘアバンド。お人形みたいに可愛い子だ。
心配そうに俺の顔を覗き込んでたので、俺は慌てて片言な英語を言いながら否定のフリをした。すると、女の子はこう返す。
「…お兄ちゃんは、日本人なの?」
「……え」
マジか…?エミリーより日本語上手いじゃん。って喋れんのか日本語!?
「…声大きいよ?ナースさんに怒られちゃう」
思った事が口に出てしまったらしく、女の子が苦笑いしていた。羞恥心が俺の顔を赤らませ、言葉をしどろもどろにさせる。
「え、って違うだろ?ここは個室だから迷惑には」
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