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そう言いかけようとした途端に女の子はほっぺを風船みたいに膨らませて、小さい声で怒った。
迷惑にはならないという言葉を咄嗟に俺は飲み込み、小さな母の説教をくらう。
「No!! 個室は個室でも壁が響きやすいの!他の患者さんに迷惑しちゃダメ!」
「ご、ごめん…」
何か、複雑な気分になるのは気のせいか?年下に「迷惑かけるな」って怒られる俺って何だろう。
変な気分だが、彼女が言っている事は正しい。
素直に謝るしかなかった。
「私こそ言い過ぎちゃった。ごめんなさい。…お兄ちゃん、名前は?」
「俺…?俺は廉。陵宮廉」
「レ、ン…?あはは!女の子みたいな名前!」
「…………」
………女の子、みたい?
笑いながらそう言われ、ショックのあまりピシッと固まってしまう。
いつの間にか俺は停止していた。
女の子はそんな俺に気付いたのか、焦りながら謝る。
「あ、お兄ちゃんごめんね!…怒ってる?」
エメラルドみたいな瞳が潤んでしまっている。現実に引き戻された俺は女の子を宥めた。
周りから見たら、アメリカ人の女の子を宥める日本の男子高校生なんて不思議なツーショットかもしれない。
「ごめんごめん。怒ってないから安心しろよ。って君、名前なんだっけ」
「アンジェ。アンジェ・ホーリング」
「アンジェか…。よろしくな」
「うんっ!よろしくね、レン!」
病院で出会った、小さな小さな天使。
俺とアンジェのささやかな交流が、始まっていた。
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