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木製サッシの大きな窓と木製の大きな扉。それらが付いた部屋は決して広いとは言えないが、狭いとも言えない。
そこに書類の山が積まれた2つの机にそれぞれ
燕尾服を着た黒髪の男と
巫女服で金髪に狐耳、更に狐の尻尾を一本生やした女が向かっていた。
「葵衣ぃ~、飽きたぁ」
女が書類の山を崩し机に突っ伏す。ザザーと派手な音を立て書類は床に散らばる。
「そうか。じゃあ、やれ。」
葵衣(アオイ)と呼ばれた男は一切気にせずガリガリと書類に文字を書く。
スーッと霧のように女は消えていく。
「バレないと思うか?」
葵衣が素早く手を動かすと持っていた万年筆が飛ぶ。
「ひゃっ!」
女は姿を現し横に飛ぶ。
「あ、葵衣ぃ…」
女の声は聞こえないといったように、葵衣は新しい万年筆で一心不乱に書類を書く。
「むぅ…判子押すだけとか、他の人にさせたらいいのに……」
ボソッと九狐が呟くが、葵衣は一切感情を挟まず、諭すように言う。
「お前の判子しか元老院は信じないんじゃないのか?」
「むぅ…それはそうだけど…」
「だけど?」
顔を上げ、九狐に笑みを向ける。ぞっと背中に寒気を感じた九狐は怒り気味に
「やるわよ!やればいいんでしょ!」
と言って、判子を押す作業に戻った。葵衣も、これで良しとばかりに書類を書く作業に戻った。
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