序章:狐と幼なじみとメイド

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「さっきの、何ですかぁ?」 扉が開き、青い髪をしたメイド服の女が入ってくる。 「って、床が書類でいっぱいじゃないですか!?」 「あぁ、すぐ片付けるわ」 九狐が指でスッと円を描くと、床に散らばった書類は一人でに纏まり、机にドスっと重たい音と共に降り立った。 「相変わらずだな、お前の魔法は」 「ふふっ、ありがとう」 九狐はそう言って笑う。 「何とも無さそうですね、それじゃあ失礼します」 「あ、リリイ」 「何ですか?」 リリィと呼ばれたメイドが振り向く。 「コーヒーが欲しいわ」 「分かりました。葵衣様は?」 「俺はトマトジュースで。無かったら薔薇でいいや。」 「こういう時以外、葵衣が“吸血鬼”だって事、意識する時がないわねぇ」 「俺は九狐が同い年の幼なじみだって事を意識する瞬間もねぇよ」 九狐と葵衣そう言ってカラカラと笑う。 「九狐様、ありありで良いですね?」 「うん。飛びっきり甘いやつがいい」 「分かりました。直ぐにお持ちします。」 リリィはスッと一礼をし、部屋を出た。
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