1章:狐と老巨人

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「神唄さん、いるのか…」 葵衣が苦い顔をする。 「その声は、やっくんかい?」 「やっくん…」 九狐が復唱し、思いっきり吹き出す。 「ちょっと、やっくんは止めてくれって、言ったでしょ!」 葵衣が大きな声で反発する。 「夜企だから、やっくん!これは決定事項だよ!」 やっくんこと、夜企 葵衣(ヤキ アオイ)が頭を抱え、最悪だ…と呟く。 「それはそうと姉さん、ありがとうございました。」 「別にいいよ~そろそろ来そうなんでしょ?」 今までのふざけた感じから一変、奈野は急に真面目な声になり尋ねる。 「ええ。近々、開戦でしょうね…」 「私たちも身の振り方考えないとね、ミカエル」 「ん、あぁ。そうだな。」 「その時は、私たちヤグルシをよろしくお願いしますよ?」 「ふふっ、ダメだよ。私たちは中立地域だかんね」 「今度、ご飯でも食べに来てくださいよ。美味しいもの用意しておきますから。」 「じゃあ、ご飯は食べに行こうかなぁ。ふふっ」 「お待ちしております」 楽しむような2人の会話。しかし、その裏に含まれる駆け引きの量は一般人が引く程の数だ。 「じゃあ、マリちゃんに変わるねぇ」 それを最後に奈野とミカエルは声を潜めた。 「マリアンヌです。」 「なるほど、マリアンヌだから、マリちゃんか」 「だそうです」 ハハッと乾いた笑いが返ってくる。 (おっと、これ以上いじるのはよくなさそうね) 「じゃあ、マリアンヌ、気をつけて、帰ってきてね」 「分かりました。」 ブツッという音と共に通話が終わった。
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