過去【前編】

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【紫鶴side】 康太「俺と椎乙は幼馴染なんです」 思いもしなかった言葉に、俺は一瞬固まった。 まさか椎乙に幼馴染がいたなんて…。 だとしたら西澤君が俺のことを知っているのにも納得がいく。 それに自分の幼馴染のことをわざわざ“悪い奴”だなんて言って転校生君に教えるだろうか。 ……だけど、 紫鶴「ほんとに椎乙の幼馴染…?」 西澤君と椎乙が話しているところを一度も見た記憶がない。 普通幼馴染なら挨拶の一つくらいは交わすんじゃないの?  訝しげに西澤君を見ると苦笑して、 康太「信じて貰えないみたいですね。 ――これならどうですか?」 そう言って渡されたのは西澤君の生徒手帳。 それを開くと、小学生くらいの椎乙と西澤君らしき少年の他に可愛らしい女の子が三人で仲良さげに写っている写真が挟まれていた。 椎乙の笑顔が本当なんだと物語っている。 ていうかショタ椎乙くそかわ。 紫鶴「ふおぉぉ…」 ほしい(^q^) 康太「信じてもらえたようでよかったです」 写真を仕舞われてしまい、ちょっと残念。 けれど落ち込んでる暇はなく、今までも相当辛そうだった西澤君が苦しそうに膝を付いたことによってそれどころじゃなくなった。 紫鶴「西澤君!?」 慌てて支えようとするけど俺よりも体格のいい西澤君を支え切れず、一緒に倒れてしまう。 う、重い! なんとか西澤君の下から這い出たはいいものの、苦しそうな西澤君を前に俺はどうすることも出来ずただ戸惑うばかり。 どうしようどうしようどうしよう!! 無茶苦茶苦しそうだ。過呼吸…? こういう時どうするんやっけ…。 ふ、袋…そうや袋!! …………ない!! 制服のポケットの中を隈無く探すが袋っぽいものは見当たらない。 これってあれですか、 人工呼吸的な……? いやいやいや、あかんやろ。 初めての人工呼吸は女の子としたい。 なんて思うんだけど、西澤君はほんとに苦しそうで見ちゃいられない。 この際男だとか女だとか関係ない。ていうかそんなこと言ってる場合じゃないだろ俺! 紫鶴「――よし!」 自分の両頬をパシンと叩いて活を入れる。 そして西澤君を仰向けに寝かせて顎を持って上を向かせた。 ゴクンと唾を飲み込んで顔を近付ける。 いよいよ口と口がくっ付く…というところで、 「……何してるの?」 とんでもない場面に遭遇した平凡君が一人。 .
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