4851人が本棚に入れています
本棚に追加
バランスを崩してベッドの上に手を付く。ちょっと腹に響いた。
端から見れば、俺が西澤君を押し倒しているような体勢だ。
言わずもがな、俺の腕を引っ張ったのは西澤君。
ああ、これが俺じゃない他の誰かだったら…。
なんて考えてしまう俺の頭はやっぱり腐ってる。
康太「何処へ行くんですか?」
不安そうな目で見られれば、なんだかなぁ…。捨てられた子犬みたい。
西澤君睫毛長いな…。鼻も高いし、畜生羨ま((ry
目の前に西澤君の顔があって思わず凝視してしまう。
紫鶴「お、俺はもう教室に戻るつもりだけど…。西澤君はもうちょっと休んでた方がいいよ」
康太「……待ってください」
離れようとすれば腕を掴む力を強められて阻止される。
西澤君の目が“寂しい”と言っていた。
けれど、
その目にはちゃんと俺が写っているのかはわからない。
……俺を通して、他の誰かを見ている気がした。
西澤君は一体誰と俺を重ねているんだろう?
その疑問を口にすることはなく、代わりに西澤君の手をやんわりと離す。
俺はその人じゃないから。
その人の代わりにもなれないから。
紫鶴「……また見に来るよ。お大事に」
軽く手を振ってカーテンを閉めた。
背中に視線を感じて振り向くと、俺をじっと見つめる真尋先生と和仁君。
やだ、照れちゃう。
紫鶴「…なーんて言うとでも思ったか!何してんの二人共!?」
和仁「え!?いや、べべ別に何も!」
真尋「ボクは邪魔な虫を駆除しようと思って~」
紫鶴「鋏で!?」
構えていた携帯を慌てて隠す和仁君。
そして鋏を持って黒い笑顔の真尋先生。
取り合えず俺は和仁君から携帯を奪う。何をコソコソしてんだか…。
画面を見るとどうやらメールを送ろうとしていたみたいで、その送り先は姉である和沙さん。
内容は俺が保健室のベッドで黒髪美青年とにゃんにゃ…にゃんにゃん!?
紫鶴「和沙さんに何送ろうとしてるの!?」
しかもご丁寧に写真付き。
一体何時撮ったの!音しなかったよね!?
和仁「え、えへ…」
紫鶴「そんな可愛いことしても許しません!」
和仁「か、可愛…えぇっ!?」
和仁君が固まっているうちにメールと写真は消去消去。
真尋「ずるーい。ボクにも構って~」
意識が西澤君から俺に逸れたのか、真尋先生は鋏を置いて俺に抱き付いてくる。
足怪我してる先生の全体重が俺に…。
しかも衝撃で腹に…!
.
最初のコメントを投稿しよう!