過去【前編】

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バランスを崩してベッドの上に手を付く。ちょっと腹に響いた。 端から見れば、俺が西澤君を押し倒しているような体勢だ。 言わずもがな、俺の腕を引っ張ったのは西澤君。 ああ、これが俺じゃない他の誰かだったら…。 なんて考えてしまう俺の頭はやっぱり腐ってる。 康太「何処へ行くんですか?」 不安そうな目で見られれば、なんだかなぁ…。捨てられた子犬みたい。 西澤君睫毛長いな…。鼻も高いし、畜生羨ま((ry 目の前に西澤君の顔があって思わず凝視してしまう。 紫鶴「お、俺はもう教室に戻るつもりだけど…。西澤君はもうちょっと休んでた方がいいよ」 康太「……待ってください」 離れようとすれば腕を掴む力を強められて阻止される。 西澤君の目が“寂しい”と言っていた。 けれど、 その目にはちゃんと俺が写っているのかはわからない。 ……俺を通して、他の誰かを見ている気がした。 西澤君は一体誰と俺を重ねているんだろう? その疑問を口にすることはなく、代わりに西澤君の手をやんわりと離す。 俺はその人じゃないから。 その人の代わりにもなれないから。 紫鶴「……また見に来るよ。お大事に」 軽く手を振ってカーテンを閉めた。 背中に視線を感じて振り向くと、俺をじっと見つめる真尋先生と和仁君。 やだ、照れちゃう。 紫鶴「…なーんて言うとでも思ったか!何してんの二人共!?」 和仁「え!?いや、べべ別に何も!」 真尋「ボクは邪魔な虫を駆除しようと思って~」 紫鶴「鋏で!?」 構えていた携帯を慌てて隠す和仁君。 そして鋏を持って黒い笑顔の真尋先生。 取り合えず俺は和仁君から携帯を奪う。何をコソコソしてんだか…。 画面を見るとどうやらメールを送ろうとしていたみたいで、その送り先は姉である和沙さん。 内容は俺が保健室のベッドで黒髪美青年とにゃんにゃ…にゃんにゃん!? 紫鶴「和沙さんに何送ろうとしてるの!?」 しかもご丁寧に写真付き。 一体何時撮ったの!音しなかったよね!? 和仁「え、えへ…」 紫鶴「そんな可愛いことしても許しません!」 和仁「か、可愛…えぇっ!?」 和仁君が固まっているうちにメールと写真は消去消去。 真尋「ずるーい。ボクにも構って~」 意識が西澤君から俺に逸れたのか、真尋先生は鋏を置いて俺に抱き付いてくる。 足怪我してる先生の全体重が俺に…。 しかも衝撃で腹に…! .
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