過去【前編】

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椎乙「この際だから言っておく」 紫鶴「う、うん」 真剣な表情の椎乙。 な、何だろう。こっちまで緊張してきた。 椎乙「勘違いしてるみたいだけど。 ……別にお前のこと、嫌いじゃない…から」 エンダアアアアアアアアア!! 紫鶴「う、うぅ…」 椎乙「ちょ、何泣いてんの!?」 紫鶴「やって椎乙が…椎乙が俺のこと好きってぇ…」 椎乙「べ、べべべ別に好きとは言ってない!自惚れんなバーカバーカ」 紫鶴「ひどい!」  でも照れ隠しって丸分かり。 顔真っ赤にしちゃって可愛いハフハフ 孫を見るおじいちゃんのような顔で――実際は鼻の下伸ばして――椎乙を見ていたらしばかれた。 どうやら話にはまだ続きがあるらしく、「聞け」と椎乙の目が語っていたので大人しく隣のベッドに座って待った。 椎乙「――あいつのことだけど…」 あいつ? あいつって誰だ。 椎乙「……康太だよ。西澤康太。 いちいち話の腰折んないでくれる?」 紫鶴「ごめん…」 椎乙の目が怖い。 椎乙「俺とあいつが幼馴染っていうのは知ってるだろ」 うん、西澤君に聞いた。 ああやっぱあの写真欲しいな…。今度頼んでみようかな。 ――おっと、また話の腰を折るところだった。 俺が頷くのを確認して、椎乙はまた話し始める。 椎乙「でも、だからって俺と康太が仲いいって訳じゃない。……寧ろあいつは俺のことを憎んでいる」 紫鶴「え、憎…………何で?」 ……真剣な話だ。俺も真剣に聞かないと駄目だ。 椎乙は少し言うのを躊躇ったけど、覚悟を決めたのか真っ直ぐに俺の目を見て言った。 椎乙「……俺が、綾乃を…あいつの好きな人を、 死なせたから」 椎乙の口から語られたのは、 残酷で、とても悲しい過去だった。 .
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