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【紫鶴(過去)side】
「なぁ~、まだ着かんの?」
「お黙んなさい!元はといえばアンタのせいでしょ!」
「ちょ、うわっ!ごめん謝るからおまっ、デコピンだけはやめ、いてえぇぇっ!!」
「安心なさい。手加減はしてないわ」
「何を安心しろと!?」
うるさいなぁ…。
隣で騒ぐ馬鹿を睨み付けると、ビクッとなって大人しくなる。
震えているのは気のせいだ。うん。
きゅうぅ…
あ。
「………」
「………」
「………」
「あほ旬輝」
「理不尽!!」
旬輝の脇腹にデュクシすると、「ぬおうぅっ…」って脇腹を押さえながら踞る。大袈裟な奴。
べ、別に、照れ隠しとか、そんなんじゃないんだからね!?
とか言ってみる。心の中で。
「ミコちゃん、俺お腹ペコペコ」
「あらまあ、ごめんなさいねぇシーちゃん。この馬鹿のせいで」
「ほんまにな、この馬鹿のせいで」
「ふ、二人してなんやねん!終いに俺泣くで!?」
「「どうぞどうぞ」」
「ドイヒー!」
なんや、泣かんやん。つまらん。
こっちは旬輝の方向音痴のお陰で食いっぱぐれとるっていうのに。
俺の桃ジュース、売り切れとったらどないしてくれるんやろ。
まあそん時は、
「死して償え☆」
刺殺?or 撲殺?
「え、なに、死?俺死ぬの?え?なあ紫鶴――」
「OK、毒殺な。ミコちゃん、例のブツを」
「はーい」
ミコちゃんから例のブツ――媚薬()を受け取る。
何で持ち歩いてるのかって?
禁則事項です☆
「これでも飲んで阿部さんとこに行って来い。青いツナギが目印やから」
「え、誰それ。紫鶴の知り合い?」
「ううん」
「え!?」
俺の知り合いに青いツナギのおにーさんなんていませーん。
ただのガチムチのおにーさんならいるけどww
「冗談はさておき。
あのさ、ここ…どこ?」
媚薬()を懐に仕舞い、ほっと胸を撫で下ろす旬輝を睨み付ける。それはもう恨めしげに。
だって旬輝がこっちって言うから着いてきたのに、一向に見つからないんだもん。
簡潔に言うと、
俺たちは迷子です。
きゅうぅぅ~…
再び鳴ったお腹を押さえて踞る。
「……お腹が空いて、力が出ない…」
桃分が足りない、桃分が。
マスターの弟のマスターがこっちで店やってるっていうから遥々関西から出てきたのに!
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