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僕は魔王だ。
魔界を統べる王。
いや、それだけなんだ。
「クズハー、腹減ったよー。
飯はまだかよー?」
僕は一日中動かなかったせいで固まった体を伸ばしてバキバキと鳴らして、近くを忙しなく動くメイド服を来た女の子に話しかけた。
夜の空を照らす銀月のような髪と瞳、本来耳がある場所には、耳は耳でも上へ尖った獣の耳がある。
整った顔立ちだが、少しばかり幼いような気もする。
綺麗と言うよりも可愛い女の子だ。
なぜメイド服なのか聞いてみたら、
可愛いから、で終わってしまった。
うん、いや、そうなんだろうが、なんとなく釈然としない。
とにかく、そんな彼女に声をかける僕だ。
「きゅー。
それが終わったら食事にしましょー?」
くるくる目が回るように動く彼女は、
ニッコリと地獄のようなことを言った。
いや、それ、お昼も言ったよね。
それから五時間は経っているよね。
「……ねぇ、飯を……」
僕は飢えた亡者のようにクズハに手を伸ばしてみる。
その手はモフモフの尻尾で、バシンと無造作に叩かれた。
「きゅー。
あたーしもご飯を食べてないですよぉ?
それなのに魔王様だけ食べるですかぁ?」
舌っ足らずにニコニコ笑顔。
まぁ、笑ってないけどね!
超怖い!
「あたーしのためにも、早く終わらせてくださいよぉ?
付き合いますからぁ」
はぁ、と盛大な溜め息を吐いた彼女は、うなだれる僕の頭を撫でる。
まぁ、うん、さて頑張ろうかな。
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