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「風を さがしにいくわ」
少女は唐突にそういった
そばにいた大人たちは驚いたように少女を見上げ
そして笑った
「どこにいくんだい?」
「風なんか その辺に吹いているじゃないか」
笑われて 笑われて
少女は黙ってその場を離れた
「あの日にふいてた風を さがしたいの」
少女はそっとそう言った
そばにいた兄弟たちはじっと少女を見つめて
そして嗤った
「そんなのあるわけないだろう」
「もっと意味のあることをしたら?」
嗤われて 嗤われて
少女はうつむいて外へ出た
「あの日の風は もうふかないの?」
少女は消え入りそうにそう言った
そばにいた少年は優しく少女を見下ろして
そして微笑った
「そんなことはないよ」
「毎日おなじ風がふくわけじゃないけど」
「君がさがしている風は 絶対にまたふいてくる」
「だってね」
少年がそっと少女の手を取ると ふわりと風がふいてきた
その風の強さに 匂いに 温かさに
少女は思わす笑顔になった
「君がさがしていたのは 僕だから」
次の日少女は一人だった
それでも少女は何も言わない
何も言わずに笑顔のままで ずっと空を眺めている
「また会えるよ」
「世界中をまわって またここにくるから」
そう言った少年を嬉しそうに待っている
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