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[風を、さがしに行きたい]
少女は突然そう言った
周りの大人は驚いて
少女を見下ろし、そして笑った
どこに探しに行くのか、と
いつでも外でふいている、と
笑われて
笑われて
少女は黙ってそこを離れた
[あの日の風を、探したい]
少女は静かにそう言った
周りの家族も驚いて
少女を見下ろし、そして嗤った
どこにもある訳ないだろう、と
そんなことに意味などない、と
嗤われて
嗤われて
少女はうつむいて外へ出た
[同じ風はもう、ふかないの?]
少女は小さくそう訊いた
傍にいた少年は驚いて
少女を見つめ、そして微笑った
そんなことはないのだ、と
同じ風はまた ふくのだ、と
いつかまたここへ
待つ人のもとへ
きっと帰ってくるのだ、と
ふわりと髪をなびかせた
その風の温度、匂いに音に
少女は思わず笑顔になった
少女は今でも待っている
いつかの風が、ふくときを
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