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夜空に浮かぶのは深紅の月… 太陽が西の地平線に、その姿を隠してから2時間は経っているだろうか? 南の空には血の色を連想させるような赤い月が浮かんでいる。 「なかなか来ないな… 今日は半月ぶりの満月だ、奴らも空腹だろうから、日が沈むと同時に現れると思ったんだがな…」 俺の隣りでカリムが呟く。 体を伏せた態勢のまま、頭を起こして、水平線の辺りを睨んでいる。 空と海の境目は曖昧になり、濃い紫色の夜空の果てには、赤い月の光りに照らされて反射する群青色の海の光りが、辛うじて見て取れる程度だ。 風の無い穏やかな海には殆ど波も無く、殺気を体の隅々まで行き渡らせている俺達には、些か拍子抜けするほどの静けさだった。 「暑いな…」 こめかみの辺りから流れ落ちた汗が、俺の顎を伝い地面に雫となって落ちるのを感じながら、カリムの独り言に、独り言で返事を返す。 今夜もまた、熱帯夜になりそうだ…熱湯の中に落ちたような濃密な大気の中で喘ぐように、俺はもう一度、水平線に顔を向けた。 「来た…」 カリムが呟く。
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