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「あ、ほら、出てきたよ! ミッチーマウス!」
と、弾んだ声で有希ちゃんが言う。
うん、そうだね。ついでに言うと恋人のミミーマウスも出てきたね。
なんだろう、この劣等感。いつもは男泣かせな彼女だけど、こういうときばかりは女の子になってる。正直ちょっと羨ましい。
だけど私は、彼女のように心から女の子になれるとは思ってはいない。だって私の頭の中は『星の王子さま』で一杯だもの。これから見るパレードよりも、家に帰った後それをやることの方が楽しみだしね。
だから私は、そんな有希ちゃんに対して何の変哲もない苦笑いで返した。
「あ、見て見て! ロナルドダック! それにチールとデップ! かあいい……」
うん、可愛いよね。特に亜美ちゃん、あなたが一番可愛いよね。
私もどれだけあなたみたいになれたらいいなって思ったことか。
そんな私の気持ちも気付かないで、そうやってまた小さな手でポップコーンを口に放り込むのね。憎たらしい。
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