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私は休日の午後、わりかし天気が良く、春が近づきつつある暖かさがあるので、久しぶりに電器店街にでも行こうかと自宅を出て、駅へと向かった。
周りはあいかわらずのかわりばえのしない住宅街である。葉のない街路樹もさびしげにたたずんでいる。
ふと横の道に入ったら駅への近道ではないかと入ってみた。
と思っていたら、通りに面したところに見たことない店があった。
古びた建物の看板には、かすれた文字で『市仁上堂書店』とあった。
いかにも昔からここにあったかのような風情だが、まったく見覚えがなかった。この道はこれまで何百回いや何千回以上通ったはずなのだが。では、ここにはまえに何があったのかというと思い出すことはできない。となると、見過ごしていたのかという気にもなる。
外からガラス戸の中を見ることが出来た。いかにも古そうな本ばかりに見えるので古本屋のようである。
私は本を読むのが好きで、よく古本屋に行って買い物をする。この書店にも掘り出し物があるかもしれないと思い、戸を開けた。なかはひっそりとしていて、人の気配がなかった。むしろ落ち着いて本を見れそうなので良かった。
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