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で、入口からつらつらと背表紙を眺めていく。
するとすぐにおかしなことに気づいた。
『死神』『死神の精度』などタイトルに死神とついているものが多い。漫画もあるなと見てみたら『デスノート』でこれも死神の話だった。他に『死神くん』『死神監察官雷堂』なんていうのもある。
たまたまこの棚だけがそうなのかと思って横にずれていっても死神ばかり。おかしな古本屋もあったものだ。どういう意図でこんな本ばかり集めたのか気になった。よほど変わった店主なのか。
と思って奥の方をふりかえったら、すぐ後ろに人がいて驚いた。
それはわずかに残った髪が白い、細身の老人だった。
「いらっしゃい」とにっこりした。「何をおさがしかな」
「何をって……」
「何をって?」
「死神の本ばっかり」
「その通り」と嬉しそうに言う。
「なんでまた」
「世間は死神のことをあまりよく知っていないと思ってね。死神の本を集めたわけですよ」
「売れるんですか?」
「あんまり」少し肩をすくめた。「でも、いいんですよ。あんまり売れなくても。世の中に一軒ぐらいあってもいいでしょ。死神本専門店があっても」
「あってもいいかもしれないけど……」
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