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死神であることを見破られたために消えた。
面とむかって言われ、嘘をつけないから消えた。死神が嘘をつけないというのもおかしなものだが、そんなものかもしれない。
まあ、こんなふうに考えても、実際どうなのかわからない。誰かにこのことを話してみても信じてもらえないだろう。
私の中にもやもやしたものが残ったが、普段の生活は変わらず、日常生活の中で、市仁上堂書店やあの店主のことなど忘れていった。『死神のすすめ』も他の本の山にうもれていった。
それでもふと市仁上堂書店のことを思い出し、見知らぬ通りにあの本屋があるのではないかとのぞいたりしていた。
でも、そういう記憶は平凡な日常のなかにうもれいくものである。
ある日のことである。私は普段、道路をわたるときなどよく気をつけているつもりである。
その時はなぜか周りをよく見ずに道路をわたろうとした。いきなり強い衝撃を感じた。クルマに轢かれたのだとすぐわかった。私は大きくふっとばされた。だが、気はたしかだった。顔を上げると私を轢いたクルマが走り去っていくのが見えた。
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