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ぽりぽりぽりぽり。
俯きがちにポッキーを無心に頬張るその姿は、なんだかリスがものを食べる姿を連想させる。しかも。
ぽりぽりぽりぽり。
二つだ。二つ音がする。
そんな二人――暮久野 相場(くれくの あいば)と、紀美野 恋(きみの れん)。
高校のブレザーを着て、内側には学校指定のセーターを。ボタンも全部止めている、真面目そうな印象の二人。
わかりにくい名前なので、一応念を押しておく。
相場は男子高校生で、恋が女子高校生だ。どちらも背が高くないから、背の順ではいつも前のほう。
席が隣同士の二人は教室の椅子にちょこん、と並んで座って、ぽりぽりぽりぽり無心にお菓子をほお張っている。
机が隣同士だから、というには近い距離。
肩と肩とが触れ合いそうな距離。
所謂ポッキーゲームではないけれど、二人、肩を寄せ合ってぽりぽり。
二人とも、それぞれ違う味のポッキーの箱を手に持って、ぽりぽり食べて、食べ終えると、自分の、相手の、箱を差し出し差し出されながら互い違いに食べている。
相場の友達がガタガタ、通り道の椅子を鳴らして近づいてきて、相場がポッキーの箱を差し出した。
「なぁ前々から思ってたんだけどさ、お前らカップルになったんだからちょっとは喋るとかしろよ!仲がいいんだか悪いんだかわかんねーだろ!!」
相場の友人がへらへら笑ってそう言った。
む、と口をへの字にして相場がポッキーの箱を引っ込めて、友人が伸ばした手がするっと空を掻く。
「…」
「…」
「…あれ、もしかして怒ってる?」
こっくり、相場と恋が頷いて、「当たり前だろ」ぽかっ、と友達の頭をクラスメートが殴った。
そうしてみんなで笑いあう。
そのあとで、二人はちょっとだけ俯いて、顔を赤くして。
ずずず、と椅子を鳴らして近づいた。
肩と肩とが、触れ合う距離に。
耳を赤く染めながら。
けれどその途端、チャイムが鳴った。
二人は慌て、椅子を鳴らして机に戻る。
近いようで、近くない――隣の席。
ちょっぴり二人はそわそわしながら、担任が来るのを待った。
そわそわしているのは二人だけじゃない。HRが終われば今日の授業は終わり。
ガラガラと扉を鳴らして担任が入ってくるのを、二人はじっと待っていた。
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