Silent lover

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 とっとっ、と相場は靴で地面を鳴らして、靴を履き終えた。  じゃぁなー、と別れの挨拶をする級友に手を振って、下駄箱を出る。  男女で下駄箱が違うので、恋とは校舎を出る一歩手前で待ち合わせ。  やがて現れた恋に小さく右手を上げて、頬と目尻を綻ばせる。  恋も小走りに走りより、そうして二人でそっと、右手を左手を合わせて微笑みあった。  その拍子にコツ、と額がぶつかりあって、ちょっとびっくり。 「あっつあつねー」  いたずらっぽく、からかうように恋の友達がそう言って、二人はぼっ、と顔を赤らめた。  触れ合っていた手を離し、ぽんぽん、何度か恋が友達の背を叩くと、恋の友達はくすくす笑って、 「またね」  と言って二人を分かれた。  二人も手を振って別れを告げる。  下駄箱を出て空を見上げる。薄暗い、あいにくの曇り空。  はー、と長く、恋が息を吐くけれど、どうやら息が白くなるほどは寒くなかった。  それでもやっぱり、寒いことは、寒くって。  歩くたびに相場の右手と恋の左手が触れ合って、けれどさっき友達に笑われたばかりで恥ずかしく――。  指の背で触れ合うけれど。  握りはしない、そんな距離。  そうして二人はゆっくり歩いた。  ゆっくりゆっくり。  そうして二人の分かれ道まできてしまい。  互いに喋る事無く、立ち止まる。  二人はなんとなく、顔を見合わせて。  指を合わせて。 「「またね」」  指を絡めて。  真っ赤な顔でそういって、そっと唇を合わせあう。  そうして二人はますます顔を真っ赤にし、恋がぱたぱた走って行って。 「メールするから!」  ぶんぶんと相場が手を振っていい、 「待ってるから」  恋もぶんぶん、手を振った。  そうして、二人は家路についた。弾むような足取りで。  スマートフォンを、ポッケから出して。  大事に大事に手に持って。  口下手な二人は会話は苦手。だからメールに想いを託して。  さぁ、今日はどんな話をしよう――。
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