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大好きだった父さん。強かった父さん。
父さんは僕の自慢の父さんだった。
まだ、僕が小さい頃。父さんが刀見せながら自慢した。
"これはお前や母さん、仲間を守る為の大切な俺の刀だ!"
その刀が在ったから自分は皆を守ることができる……そう言っていた。
でも、父さんはそんな刀に殺されたんだ。
守る為の刀なんてありはしない。刀は刀。人を殺すための道具にすぎない。
「……?」
「お!こいつ目ぇ覚ましやがったぜ」
目を開けると、そこには知らない男達がいた。
驚いた智也は体を起こそうとするが、ロープで縛られ身動きが取れない。
「あんた達は何者だ!……ぐっ!」
一人の男から口を押さえられる智也。
よく見ると、その男は昼間見た藩士と名乗っていた奴だった。
「昼間はよくもやってくれたな!」
「うぐっ!」
智也は首を閉められ、片手で宙に持ち上げられる。
そして、男はもう片方の手で刀を抜いた。
息の出来ない智也の意識はどんどん薄れていく。
「殺しただけじゃたんねぇ。死んだあと気がすむまで殴って、バラバラに刻んで売りさばいてやる!」
そう言う男の声すらももう、智也には届かなかった。
しかし、刹那。周囲に甘い香りが漂う。
まだ、何か智也に叫んでいる男達は気付いていないようだ。
──これは、確か?
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