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──あぁ、そうか。これは……。
「ううん。いいんだ。それより、さっきは助けてくれてありがとう。僕は成城智也。ねぇ名前、教えてくれる?」
「俺は、小鳥遊 稀恭(タカナシ キキョウ)。」
「小鳥遊……稀恭。うん。よし!よろしくな!稀恭!」
いきなり呼び捨てにされて稀恭は驚いていた。まさか、知り合ったばかりの少年に自分が呼び捨てにされるとは思っていなかったのだろう。
一方、智也はというと。
「生意気な奴。人のこと呼び捨てにしといて何が楽しい。」
「ナイショ!」
それは、懐かしさとも言っていいだろう。ただ、それに似た感情だと気付いた智也は、心から嬉しかった。
「たくっ!もう勝手にしろ」
馴れ馴れしく接する智也に呆れた稀恭は、智也を置いて立ち去る。
「あ!稀恭、待ってよ!置いてかないで!」
姿を見失うまいと、智也は稀恭の後をついていった。
日も落ち、辺りが暗くなった頃。智也と稀恭はまだ森の中を歩いていた。
途中、なかなかしゃべろうとしない稀恭だったので、智也は自分のことについて話した。
両親のこと。家を飛び出してきたこと。そして、刀のこと。
「おじいちゃん、酷いんだ!僕のこと弱いって言うし、小太刀で身を守れって!自分を守るために他人を殺せって言うんだ。ねぇ、稀恭も酷いって思うでしょ?」
智也の問いかけに対し、稀恭はやっと口を開いた。
「……成城。お前に大切な人はいるか?」
「それがどうしたの?」
「おじさんは、お前が大切だったんじゃないか?どうしても失いたくなかった。だから、いざというときのために小太刀を渡したかったんだ。」
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