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市場は活気であふれていた。
智也は行き交う商人に声を掛けられながら、初めて見る風景に目を輝かせていた。
「うわぁっ!」
前を見て歩かなかった智也は、突然誰かとぶつかった。
「ごめんなさい」と言おうと顔をあげたが、刹那、言葉が詰まった。
今までに感じたことのない何かが智也を襲う。それは威圧感でもなく恐怖感でもない。
そんな、甘い香りを漂わせる煙管をくわえた眼帯右目の香色の髪をした青年に目を奪われる。
「おいお前!俺に恨みでもあるのか?
」
その声にハッと正気に戻った智也は、直ぐにその場を立ち去った。
しばらく走った後、途中目に入った東屋に立ち寄る。
荒れた息を整えながら、空を見上げた。そこには穏やかな雲が流れていた。
視線を前に向けると、行き交う人たちが目に入る。
聞こえてくるのは笑い声やこどもたちの元気な声だった。
──平和な町だな。
智也がそんなことを思っていると、どこからか騒がしい声が聞こえてきた。
少し気になって声がする方へと向かった。
すると、とある路地に人だまりが出来ていたのだ。
恐る恐る人だまりの中をのぞい見ると、何やらもめ事をしているように見えた。
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