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「女!我らを誰だと思っている!この紀州藩の藩士だぞ!」
「申し訳ございません」
見たところ、紀州藩の藩士と名乗る男が、お店の娘に怒鳴っている。
彼女が何をしたかわからないが、何度も謝っているのに男達はそれを聞き入れなかった。
そしてついに、男達は腰に差してあった刀を抜いた。
野次馬になっていたまわりの人は、悲鳴をあげその場を逃げていく。
「待って!誰か助けて!」
彼女は周りに助けを求めるが、誰一人聞いてはいなかった。
ただ、智也一人を除いて。
──どうして?どうしてみんなは逃げるの?
「何してるんだ坊主!お前も殺されてしまう!早く逃げるんだ」
その場を動こうとしない智也に野次馬の一人が声をかけた。
「お前も自分の命が大切だろう!」
そう言って手を握られた智也だったが、その手を振り払い彼女の元へと走った。
「何だ?小僧…」
「坊や?」
「おじさん達、こんなことして恥ずかしくないの?僕の父さんは決して刀を暴力の為には振るわなかった!」
「何だとっ!?」
智也の言葉に頭に来た藩士は矛先を智也の方に向けた。
そして、それは降り下ろされる。
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