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部屋に入ってきた彼は手に小さな箱を持っていた。
智也の前に腰を下ろすと、その小さな箱を智也の前に差し出した。
「それは君のお父さん片見だ」
「父さんの?」
智也は急いで箱を開けると、そこには小太刀が収められていた。
しかし、すぐに蓋を閉じた。
「どうしたのだね?」
「……。」
「君のおじいさんからの伝言です。『君は優しい。だがゆえに、弱い。その小太刀をあげるから帰って来なさい』だそうです。」
うつむいたまま、智也はいった。
「僕は弱くなんかない。」
ぐっと涙をこらえながら最後に智也はいい放った。
「もうあの頃の子供じゃない!それに、そんなものなんて要らない!」
彼の呼び掛けに耳をかたむけず、智也は屋敷を飛び出していった。
走って走って走った。
がむしゃらに走った智也が足を止めると、空はもうすぐ夕焼けになる頃だった。
一体、どのくらいの時間を走っていたのだろう。
ただ、そう考えながら近くの木に身を寄せた。疲れのせいか目蓋が少しずつ重くなる。
──父さん……。
智也は深い眠りについていった。
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