少女

5/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
その瞬間だった。 首元に激痛が走った。 苦しみの中、その苦しみを押しのけて現れた痛み。 唯一血の気が戻ったと感じられた、 緊張から抜け出せた暖かい部分を、 まるで吸い取るかの様に 何かが溢れ出る気がした。 次第にその痛みが熱くなる、 身体全体がそれに合わせて熱く…、 その現れた症状、 先程まで臨んでいた症状をオーバーしたソレと引き換えに次第に意識がぼんやりとしていく。 霞む視界、自販機の明かりが眩しく感じられる中、 新たに生まれた症状は喉の渇きだった。 強烈な喉の、いや…身体の渇き。 生きるために必要な何かを…あの時吸い取られたのだと霞んだ思考の中で理解した。 地面に倒れ、ぼんやりと思考の中、 身体に伝わる振動を感じた。 何も感じないような、 神経の麻痺さえ感じた気がした中で。 目線をあげると…帽子…を被った人。 顔は見えない。 視界がもうはっきりしていないから…。 その人は私を抱き上げる… けど直ぐに路上に下ろした。 その人の体温が暖かかった。 意識がもうプツプツ途切れ気味の最中、 身体を伝わって感じられる振動はしっかりと、 それだけはすごく普通に感じられた。 その人は何かの方に体制を立てると 微かに動きを見せた。 その瞬間に強い振動が地面に伝わってきた。 何かが地面に叩き付けられる音、つまりその振動。 続けざまにもう一度、 今度は何かを潰したかのような…。 しばらくして 何かが私を再び抱き上げる。 暖かい。 すぐその人だとわかった。 何かが聞こえる気がする、 けどもう限界。 渇きがひどい。 微かな神経を先程の動きに使ったことにより 疲れきった理性なんてとっくに 死んでいた。 同時に、渇きを潤す、 そんな方法がパッと頭に浮かぶ。 な~んだ、すごく簡単。 その人は反応する、 でももう遅い! 私はその人の首筋に目掛けて牙を剥いた。 何かの手応えならぬ歯ごたえ、 途端に潤う私の中の渇き、 そして、 何かを感じて私の意識は完全に遠退いた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!