その人、

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少女カナが眼が覚めたのは 座敷の8畳間、襖が開いていて顔に当たる太陽の光が暖かい…そんな自室のど真ん中の布団の上だった。 身体が重い…、 カナは身体をごろりと 開いた襖の先を見つめつつ、 ゆっくりと回復する意識から 虚ろな記憶を搾りだす。 ああ…、そういえばそうだった。 太陽が見える以上、昨日私は…。 やめとこう。 明らかに記憶が虚ろな部分があるのだから絶対に夢なんかじゃない。 だって記憶力に自信あるし…。 カナはため息をつくと流れる汗を拭いつつ重い身体をゆっくり起こし上げて、 きっと母のいるであろう台所へと向かう。 すると…、 「ひゃっ!?」 「んおっ?」 通路の突き当たりで誰かに衝突してしまった。 情けないことに尻餅をついてしまった私はスッと差し出された手を取り立ち上がる。 「ありがとうございます。」 (と、お礼を言ったのは良いものの…、 誰よこの人。) 夏真っ盛りな熱さの中、 腕こそまくっているけど黒いジャケット?を着たその人を私は知らない。 もしかしたら、不審者じゃないの? ふと思考にそんなことが浮かぶ。 やや警戒しながら右足をほんの少し後ろにずり下げる。 すると、 「何やってますん?カナちゃん。」 その人の後ろから聞こえた女性の声、 母の声だ。 その声の主…つまり私の母は その人の後ろからひょいと顔をこちらに覗かせる。 何と言うか子供っぽい癖のある仕草の母の登場により、 場は一旦の終着に至る。
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