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「……お前がひどい事を訊くからだ」
返ってきた呟きに顔を上げ、唇を噛締めるとフェルマイズは振り返った。
「そうだった……すまない」
パシヴィルは再び手元に視線を落としていた。その俯く姿に、全くひどい事を訊いたとの自責の念が強くなる。
少し考えれば、いや、考えなくともあり得ない事は分かりきっていた。自分こそ何に動揺したのかと省みる。友人に対してか、『彼』に対してか、二人が自分の知らない秘密を持っていた事にか――そんな事は今までいくらでもあった。つまるところ子供じみた独占欲にすぎない。第一、嫉妬するほどのものすら持ってはいなかった。
こうなっては、彼の言うべき言葉も止まったのではないかと、自身の失言の重さがことさら深く身に迫った。
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