如何なる運命の元でも

4/14
前へ
/14ページ
次へ
毎晩、家畜がいなくなる。 最初は夜に、一頭か二頭ずつ、飼い主の隙をつくようにいなくなった。 次第に、昼間でも家畜から目を離すと、消えていくようになった。 直接姿を見た人はいなかったけど、大型の獣のような息づかいを聞いたとか、影を見たとか、あちこちでそんな話が飛び交った。 里の大人は当然のように、真っ黒のヒトの連れていたケモノを疑った。 ついには、抗議をしに行って‥‥その人も、いなくなった。 翌日の朝、薄汚れた頭蓋骨が、里の真ん中に掲げられていた。 里中が震え上がった。 だって、そうでしょう? 家畜も大切だけど、まさか人間まで‥‥。 家畜を小屋に押し込んでも、家に子どもを閉じこめても、被害は広がるばかりだった。 里のはずれよりももっと奥の、古い遺跡に棲みついてるってウワサもあった。 ‥‥確かめに行けば、自分たちが二の舞を踏むのはわかりきってたから、誰も行けなかったけど。 ━━ でも、あたしは知っていた。そのウワサがたぶん、ほんとだろうって。 だって、見てしまったんだ。 三軒隣の家の赤ん坊を‥‥、 あのケモノが、ひと呑みにできるくらい大きな口でくわえて、連れ去るところを‥‥。 濁った眼に映らないことを、恐さで体の動かないあたしは、必死に願うしかできなくて。 横にいた愛犬のパムが、アイツらに吠えかかって追っていくのを、ようやく追いかけることができたときには 兄弟みたいに育ったパムが、里のはずれよりも奥へと、 アイツらと一緒に、消えていくところだった ━━。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加