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兎も角だ。
奇天烈が奇天烈じゃなくなったところで、現実が現実じゃなくなるわけじゃない。
だから
「なんだよこのメール!」
という過剰反応こそしなかったけれど
「何言ってんだこいつ……」
という反応はしたわけで。
先日ネットショッピングの際に衝動買いしてしまったブルーレイを再生しながら事の詳細を尋ねる旨を返信したところ、返ってきたのは文ではなく写真。
一枚の写真だった。
「マジかよ、あいつ……」
チケット。
飛行機のチケットだった。
北海道行きの。
綺麗で白い指につままれた二枚のチケットはいじらしく頭をたれて写真に撮られていて、無性に腹ただしい。
――拒否という選択肢は無い。
それはわかる。
わかっていた。
けれど、ぼくだっていつまでも幼馴染にいつまで振り回されるような男ではないのだ。
これからぼくらは別々の人生を歩んでいくわけだし、その歩みはもう始まってるわけで、だから直接文句を言ってやろうと思って電話をした。
したんだ。
「十九になっても一度も離れ離れになっていないところを見ると、このまま一生一緒に行きそうだけれど?」
との返答。
ふざけやがって。
「お前と一生一緒だって?冗談じゃないぜ!ぼくはこっちで楽しくやってる。そっちもそっちで楽しくやれよ!じゃあな!」
「テスト勉強、付き合ったのは?」
「……」
「あれはいつ、どうやって恩返すのかね?」
「……すみませんでした」
結局、朱子だけがぼくに依存してるわけじゃないんだ。
それが、情けないんだよな。
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