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 ――夜の雨は好きじゃない。  どうしてだろう。  どうしてだろう。  いや、どうしてだという話をすれば、ぼくはこうして考え込むような行為も嫌いだし、夜の陰湿な黒さと重さも嫌いだし、雨のあの湿っぽさも、あの冷たさも、そもそも空から何かが落ちてくるという不可解な現象にだって嫌悪の念を向けるところではあるんだ。  ただ、ぼくはもう大学生だし、だから嫌なものと嫌なものとが組み合わされば凄い嫌なものが出来上がるなんて幼稚な発想もしない。  マイナスとマイナスの除法がプラスになるように。  いやあ、本当に大学生かと疑う気持ちもわかるよ。  今の言い回しなんて、全く大学生らしくなんてなかったものな。  でも大学生なんだ。  それが問題なんだな。  だから問題なんだ。  だから、夜の雨の正体も、つかめないままなんだろうな――。
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