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「はあ、何だってこんなことになってるんだよ……。今頃ぼくは部屋でぬくぬくしながら、先日届いたブルーレイの鑑賞に浸っているはずなのに」
「フィクションよりノンフィクション。ノンフィクションよりフィクション。人は求めているものとものとの間で右往左往する生き物さ。そういう点では、よかったじゃないか。貴重な経験が、今現在出来ているのだから」
「リアルな死体を見れて良かったねってか。良くねえんだよ何も!おかしいと思ったんだ。ぼくに任せて、自分は玄関の外で待機なんてさ」
「ブラがずれてしまったのだ。仕方ない」
「昔からお前はそういう色気をにじませるような嘘でぼくを騙してきたけどさ。いいか、この際言っておくぞ。ぼくはもう19なんだぜ?」
「ほう。では幕堂君は童貞ではないと?」
「そうさ。お前は知らないだろうけどな。大学生になれば、コンパやらがあるんだよ。女の子とを知り合う機会なんていくらでもあるのさ」
「そうなのか。中々に衝撃的な内容だね、それは」
「どうして?」
「だって幕堂君は私のことがずっと好きなんだと思っていたから」
「お前なあ……」
こいつは昔からこうだ。
ぼくがこいつを手伝うのは幼馴染というわかりやすい腐れ縁があっただけで、そんな愛情なんて一片もないんだってことを分かっていないらしい。
「でも、美少女の幼馴染というのはとてもそそる存在では?」
「ああ、美少女の幼馴染ならな。でも生憎、お前は美少女じゃあない」
「まさか。私は私が自惚れるような経験を幾らもしてきた。それらはなんだ?全て虚実だとでも言うのかね?全て私の頭の中の出来事か?あの日あの場所で、私の告白イベントを何時も盗み聞きしていた幕堂君というのは全て嘘?」
「そ、それは嘘じゃねえよ!ていうか何度も言うように、ぼくは盗み聞きなんてしていない!」
「むう。強情な」
「兎も角だ。お前は美少女じゃないんだ。いいか?顔だけは認めるよ。顔は凄い美少女だと思うよ?これ以上ないくらいの完成された顔立ちだし、仮に女子が顔のランクで戦うようなマンガがあれば、お前は間違いなくラスボスさ」
「…………幕堂君。本当に私のこと好きじゃないのか?」
「ちげえよ!」
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