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「さて、では戻ろうか」
「一旦、だろ?」
「わかるかい?」
「わかるさ。お前、どうせギャラが出なくたってこんな面白い事を逃す訳にはいかないって言うんだろ?いくらだって付き合ってきたからわかるさ」
「いやあ、本当に流石だね、幼馴染とは。ちょっと告白してみてはくれないかね幕堂君。今なら絶対プロポーズされたらオーケーだせるだろうし」
「空気でオーケーだされても嬉しくねえっての」
「むう」
深夜の家から離れていく。
ひとまず、一旦、一度、拠点に帰る。
ぼくの初めての北海道旅行はとても災難なスタートを切ったけれど、なあにまだこれからさ。
クソッタレ朱子との仕事はスタートラインから半歩も動いちゃいないんだからな。
「ひとまずさあ、朱子。旅館に戻ったら今回の仕事を確認させてくれよ」
「ええ?事前資料はメールで送っただろう?」
「ああ、送られてきたよ。メール一通、お前のアドレスから、『仕事なので付き合い給え』って、一文だけな」
「十分ではないか」
「不十分だ!北海道行きの飛行機の中でも言ったけど、お前は耳鳴りがするからと言って詳細を説明はしなかったな。だから今度こそ、いい加減教えてもらうぞ。いいな?」
「ではひとまずなにが知りたいのか明確にしてくれ。そうだなあ。明日の昼にでも、まとめたものを聞かせてくれると嬉しい」
「寝るつもりだろ!そうじゃなくて、今すぐに、旅館に戻ったら話を聞け!いいな!?」
「ええー……。眠いもん……」
「昼寝してたろ!」
飛行機疲れといって六時間睡眠した朱子のせいで依頼主に話を聞く時間がこんなことになった。
それを自覚しないで目をこする幼馴染は殴ってもいいですよね?
「いやだあ、もう眠いから寝るの!いいでしょお?」
「うう、クソぉ……、ぼく甘えモードのお前には弱いんだよなあ……」
「やったあ!おんぶ!おんぶして!」
「キャラすごいぞお前」
いつものことだけどさ。
ただ、死体見せつけられておいて素直におんぶしちゃってるぼくがとやかく言えることもないのかもしれないとか、思うわけなんだよな。
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