第五章 ルービックキューブ

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   松本の言う通り、外部の人間の犯行であるならば。一つの仮説が、どうにも現実味を帯びてくる。  沖 公一郎の愛人による犯行説。  もしも、外部の人間の犯行であるならば、捜査本部が追っている沖の愛人が容疑者という図式が、よりリアルになってくるのだ。  その愛人の存在は、まだ明確になっていないのだが。そう考えると、捜査本部は矛盾した捜査をしている事になる。  犯行はビル内にいた人間としながらも、外部の人間である沖の愛人を調べている。容疑者がここまで絞り込めない手前、そうなってしまうのは仕方の無い事なのだ。  だが酒出は、外部の人間の犯行説をやんわりと否定した。 「外部の人間の犯行だとすると、入館から殺害の実行をし退出するまで。様々な条件を、クリアしなけりゃならねぇよな」 「それは、そうですが……」 「ところが、内部の人間ならば。その条件は、極端に少なくなってくるからな」
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