第五章 ルービックキューブ

26/58
前へ
/320ページ
次へ
   しかし、酒出は動じなかった。  気にはなっているものの、酒出は殺人と沖を切り離して考えている。こうした事実が出てくると、どうしても沖と殺人の関連を考えたくなる。だが、そうなれば元の木阿弥である。  昨夜から組み上げた推理を、最初から組み直さなければならなくなってしまう。  それは、捜査の長期化を意味する。  食事を終えた酒出は、事件ノートを見直しながらルーティーンを始める。見ているのは、ビル内で働くスマイル一番生命社外の人間の証言であった。  殺人の実行犯は誰なのか。  結局、それが判明すればすべては解決する。  捜査本部のこれまでのアプローチは、沖の抱える裏の顔の部分から、実行犯にたどり着こうとしていたら。実際は、それで殺人について捜査の進展は無い。  ならば、沖の事を考えず殺人の犯人を特定すべきであろう。 「しかし、警部補。どのように特定するのですか?」
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2144人が本棚に入れています
本棚に追加