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しかし、酒出は動じなかった。
気にはなっているものの、酒出は殺人と沖を切り離して考えている。こうした事実が出てくると、どうしても沖と殺人の関連を考えたくなる。だが、そうなれば元の木阿弥である。
昨夜から組み上げた推理を、最初から組み直さなければならなくなってしまう。
それは、捜査の長期化を意味する。
食事を終えた酒出は、事件ノートを見直しながらルーティーンを始める。見ているのは、ビル内で働くスマイル一番生命社外の人間の証言であった。
殺人の実行犯は誰なのか。
結局、それが判明すればすべては解決する。
捜査本部のこれまでのアプローチは、沖の抱える裏の顔の部分から、実行犯にたどり着こうとしていたら。実際は、それで殺人について捜査の進展は無い。
ならば、沖の事を考えず殺人の犯人を特定すべきであろう。
「しかし、警部補。どのように特定するのですか?」
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