第五章 ルービックキューブ

32/58
前へ
/320ページ
次へ
   酒出の言葉に、何人かの捜査員が表情を歪めた。  気分転換と言いながら、酒出が何かを語る。それは、捜査を大きく進展させる何かだと、期待したのだろう。  だが、それは殺人の実行犯を、最優先で特定すべきだという主張だった。  期待外れ感が、辺りに漂っている。そんな空気感など気にも止めず、酒出は自身の推理を披露し始める。 「まずは根本的なところで、沖 公一郎の存在を頭から外しておいてくれ」  その発言に、室内がざわめく。明確な物証や証言が出ていないものの、状況から考えて沖が無関係とは思えない。そういった反応であり、柿崎の捜査方針に逆らうのかといった空気感である。  今は、県警の捜査員が多数。  柿崎の部下だけならば、こうはならない。だが、酒出との捜査が初めての者もいる。中には、柿崎を崇拝する者もいるのだ。 「何を考えているんだ、あの人は」  そんな声が、どこかで飛んでいる。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2143人が本棚に入れています
本棚に追加