プロローグ

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  「あの娘が、もう少しやってくれたらな……」  彼女の中で、思う人物がいるようである。その人物が、もっと頑張れば、自分としても仕事がやりやすくなる。  そう、思っているようだ。  真美は、持ち込んだ紙コップの炭酸飲料を口に含み。いつものように階段に腰かける。  金属製で、つづら折りの階段。  非常階段のような、無機質な金属の階段は、冷気を蓄えて真美の尻を冷やしてくれる。だから、ここで休憩する。  社内の人間や、このビルの関係者で真美を知る者は、この時期・この時間帯に、彼女がここで休憩する事は周知の事実。  姿が見えなければ、ここにいる。  それは、真美自身が触れ回っているからであった。  生保レディの後輩などは、それを利用し個人的に仕事の相談に来たりもする。この時期なら、真美とは違い一枚羽織って体を冷やさぬようにして。 「今日は、誰も相談に来ないのかな」
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