運命の出会い

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「さっきは危なかったな茉白!ギリギリセーフ!お前来ないんじゃないかって、心配したよ」 「あはは…ごめん」 初めての、科学室での授業。 迷子になった末に何とか滑り込みを果たした俺は、友人の言葉に苦笑した。 科学の武井先生は学校内では"恐怖の先生ベストスリー"に入るという、とにかく恐ろしい先生らしい。 そんな先生を相手に滑り込みセーフ。 なんて、あまり良いものではないのだけど、俺は運が良かった。 そう、一緒に来てくれた人、俺をここまで案内してくれた人が、良かったんだ。 「ねえねえ八沢君!さっきのあの人さ…黒崎先輩だよねっ?」 「え…誰?知ってるの?」 さっきのあの人は、どうやら『黒崎先輩』と言うらしい。クラスメイトの女の子、談。 「知らないの?二年の黒崎宗一先輩!超クールで超イケメンの校内女子人気ナンバー1!!ファンクラブだってあるんだからっ」 「…あ、そ…そうなんだ」 ファンクラブ…そんなものが学校内にあるのか…それにそんな情報をわずか二週間でゲットしている女の子って、凄い。 それ以前に、あの先輩がそんな人だったって事にも、凄いとしか言い様がない。俺は、何だか凄い人に借りを作ってしまったみたいだ…。 「成績優秀、家柄も良し!先生からの受けも良し!!何やらせても一番を取る完璧な人なんだって!超カッコイイ!!」 「うわー…パーフェクト人間。そういう奴って絶対性格悪いぞ!茉白、お前あんまり関わるなよ?」 「え…いや…大丈夫だよ。関わる事もないだろうし」 異性に好かれる人は同性に嫌われるって法則。やっぱりあるんだ。 別にそんな嫌な人ではなさそうだったけど……でも確かに、取っ付きにくさはあったかもしれない。 そう…それはほんの少し前の事。 迷子になった俺は全速力で廊下を走って、走って、そのまま……その、黒崎先輩と正面衝突をした。 いや、勝手に賭けはしたけど!本当に人が居るとは思わなかったんだ!まさか、あのタイミングで、横から人が出てくるなんて…っ でも、それよりも驚いたのは… ぶつかった衝撃でお互い見事に転がった後、顔を上げた瞬間、 『……うちで飼ってた犬に、似てる』 って…… 初対面の人間に対する第一声がそれ!?犬!?俺って犬に似てるの!? …あまりの衝撃に、俺は謝る事すら忘れてしまった。しばらく唖然として、思い出したのは科学室を探していた事。
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