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でも残念ながら、すかさず七瀬先輩の動きを抑えにかかったものの止める事は叶わず、七瀬先輩は三神先輩を振り払った。
そして、俺の目の前に立っている。何とも豪快に、片足を机に乗せ、身を乗り出した状態で。
三神先輩…これは、一体どういう事なんでしょうか。
顔面蒼白、とは今まさに俺の状態を表しているだろう。
すぐ真横から伸びてきた厳つい腕が、七瀬先輩の胸ぐらをがしりと掴んでいる。当然、七瀬先輩も完全に机に上った状態で相手の胸ぐらを掴んでいた。
二人の顔が近い。
テレビでよく見る喧嘩シーンを、こんなにも間近で見る事になるなんて…俺はもはや声も出せずに固まっていた。
動けば、自分も流れ弾を食らいそうな位置。
どうすればいいのか解らない。
そして、再び三神先輩が叫んだ。
「やめろって!!金次!!!!」
その瞬間。
「おいお前ら!何してんだぁ!!!」
辺りに響き渡ったのは、威勢の良い男の声。
「またお前らか!!」
そんな怒声と共に大股でやって来たのは、誰もが恐れる教育指導の鬼教師。
俺だって人並みに恐れている先生だけど、今だけはまさに、天の助けだと思った。
「ちっ…面倒くせえ奴が来た…行くぞ」
先に身を引いたのは不良の方で、七瀬先輩の胸ぐらを掴んでいたリーダー格の一人が悪態をつき、先輩から手を離した。
同時に先輩も相手から手を離したが、未だに殺気は消えない。
でも、不良グループはあっという間に退散してくれた。鬼教師の力、絶大。どうやらあのグループは前々から目を付けられていたらしい。
「ほら七瀬!お前も後で指導室行きだからな!とにかく机から下りてろ!」
先生はそう言って七瀬先輩を軽く促すと、そのまま不良グループの後を追いかけて行った。
途端に、静まり返る食堂内。
「あー……もう」
未だに固まったままの俺の前で、ようやく殺気の消えた七瀬先輩が"やってしまった"というように小さく呟いて項垂れた。
「な、七瀬先輩……」
俺も恐る恐る口を開いてみると、何とか声が出た。三神先輩はもはや呆れきった様子で散らかった机の上を片付け始めている。
とにかく、まずは七瀬先輩を机から下ろさなければならない。でも、何て言葉にしたら…
「七瀬先輩…あの…」
「ナナ。早く下りないと、スカートの中、丸見え」
なんて、考えている間に、聞き覚えのある声が俺の言葉を遮っていた。
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