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その一言に、七瀬先輩ははっと我に返ったように慌てて机から下りた。この声は…
「クロ…先生呼んだの、お前か」
そう、"クロ"こと、黒崎先輩だ。
俺より先にその姿を確認した三神先輩が、小さく息をついた。そんな三神先輩の言葉にこくりと頷き、黒崎先輩はゆっくりと俺の隣りに顔を出した。
そして、何故か俺は
「……あの、黒崎先輩…?」
わさわさと、頭を撫でられた。
何故だ……。
初対面でいきなり犬に似てるとは言われたけど、未だに俺の認識はそのままなのだろうか…。
「食堂にあの四人が入ってくのが見えたから、何か起こる気がしてとりあえず先生捕まえてみた」
俺の戸惑いなど全く気にしない黒崎先輩は淡々とそう言いながら、しばらく俺の頭を撫で続けている。
「ああ…おかげで助かった。悪いな。ほら!金次!お前も何とか言え!!」
み、三神先輩…黒崎先輩にもこのわさわさをどうにかするよう何とか言って下さい。
「ごめん…イッチャン、ありがと」
「別に」
黒崎先輩は、とことんマイペースな人だ。もう、とりあえず気にしない事にしよう…。
「全く…アイツと金次は昔から犬猿の仲だからな」
それよりも気になるのは。さっきからちょいちょい三神先輩の言葉の中に登場する名前の事だ。"アイツ"と言うのはさっき会った不良グループのリーダーだとして…"金次"は?
「いい加減、冷静に回避する方法を学べよ」
「うるさいなーギンは!いつもアイツから吹っ掛けてくるんだから仕方ないじゃん!」
「だから!喧嘩売られたからって、買わなきゃ済むことだろ」
「は!?嫌だね!!売られた喧嘩は買ってやるのが男ってもんだ!!」
そんな三神先輩と七瀬先輩の一連のやり取りを聞いていて、俺は思わず手元にあったお茶のペットボトルを握り潰しそうになった。
「あ…あの!!!ちょっといいですか!!?」
次の瞬間には、そのままの勢いで先輩達の会話に割って入っていた。ぴたりと動きを止めて、七瀬先輩と三神先輩がこっちを見つめている。
「あの、すいません…さっきから、何が起きてるんですか?」
僅かにはしった緊張の中、俺は何とか言葉を繋いだ。
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