16人が本棚に入れています
本棚に追加
そして
「その…七瀬先輩って!一体何者なんですか!!」
思い切った。ここは思い切って聞かなければ、始まらない。
その瞬間、黒崎先輩の手もぴたりと止まった。
「何者って?僕はハッチの可愛い先輩だよ!忘れちゃったの!?」
いや、そうじゃなくて…!今までの流れでそんな事まで忘れるなんて俺はどんな馬鹿ですか。
「金次…そういう意味じゃないと思うぞ」
そう!さすがです三神先輩。そして、またその名前…
「あの…!」
「七瀬金次。ナナの名前。コイツいつもこんな格好してるけど、本当は男だから」
…改めて、聞くまでもなく。
さらりと、見事なまでに簡潔な説明が頭上から聞こえた。
「やだ!イッチャン!!そんなあっさりと言わないでよ!恥ずかしいじゃん!!」
そんな説明をくれたのは、黒崎先輩だった。七瀬先輩は何故か頬を赤らめて恥ずかしがっているけど、三神先輩は呆れたように首を横に振っている。
「シロ、お前…やっぱり知らなかったよな」
やっぱりって…いや、一年生の大半が、知らないと思います。まさか、まさか…七瀬先輩が…
「ついでに言えば、家は七瀬組っていうヤクザの本家で、父親は九代目組長」
って、えぇ!!!?
「ちょっ…ギン!!そこまでバラさなくてもいいだろ!!?」
いや、そんな七瀬先輩の口調の変わりっぷりにもビックリですが…。
「で、さっきの不良は敵対する赤羽組九代目の一人息子」
「ギンー!!!」
「あのなぁ金次。あれだけ怖い思いさせたんだ、これ位の説明がなきゃ納得いかないだろ」
「う…!」
もう、色々と驚きすぎて…言葉にもなりません、先輩。
「ご、ごめんハッチ…怖かった…?」
「あ…えっと……」
怖かったです、正直に。でも…
「ギン…ほら、全部教えちゃったら…余計にさ…」
でも、何故か
「何か…すっきりしました」
「へ?」
嫌な感じはしなかった。
七瀬先輩はたぶん、全て知られてしまったら嫌われる、怖がられる、とでも思ったのだろう。
逆に怯えるように縮こまった七瀬先輩が、俺のその一言で、妙に間の抜けた声を出した。
「七瀬先輩って何となく謎が多い気がしてたんですけど…色々と驚かされて、何か、すっきりしました。やっぱり、お茶部って面白いなーって、改めて実感したというか…」
本心だった。
最初のコメントを投稿しよう!