先輩観察記録

10/16
前へ
/30ページ
次へ
そして 「その…七瀬先輩って!一体何者なんですか!!」 思い切った。ここは思い切って聞かなければ、始まらない。 その瞬間、黒崎先輩の手もぴたりと止まった。 「何者って?僕はハッチの可愛い先輩だよ!忘れちゃったの!?」 いや、そうじゃなくて…!今までの流れでそんな事まで忘れるなんて俺はどんな馬鹿ですか。 「金次…そういう意味じゃないと思うぞ」 そう!さすがです三神先輩。そして、またその名前… 「あの…!」 「七瀬金次。ナナの名前。コイツいつもこんな格好してるけど、本当は男だから」 …改めて、聞くまでもなく。 さらりと、見事なまでに簡潔な説明が頭上から聞こえた。 「やだ!イッチャン!!そんなあっさりと言わないでよ!恥ずかしいじゃん!!」 そんな説明をくれたのは、黒崎先輩だった。七瀬先輩は何故か頬を赤らめて恥ずかしがっているけど、三神先輩は呆れたように首を横に振っている。 「シロ、お前…やっぱり知らなかったよな」 やっぱりって…いや、一年生の大半が、知らないと思います。まさか、まさか…七瀬先輩が… 「ついでに言えば、家は七瀬組っていうヤクザの本家で、父親は九代目組長」 って、えぇ!!!? 「ちょっ…ギン!!そこまでバラさなくてもいいだろ!!?」 いや、そんな七瀬先輩の口調の変わりっぷりにもビックリですが…。 「で、さっきの不良は敵対する赤羽組九代目の一人息子」 「ギンー!!!」 「あのなぁ金次。あれだけ怖い思いさせたんだ、これ位の説明がなきゃ納得いかないだろ」 「う…!」 もう、色々と驚きすぎて…言葉にもなりません、先輩。 「ご、ごめんハッチ…怖かった…?」 「あ…えっと……」 怖かったです、正直に。でも… 「ギン…ほら、全部教えちゃったら…余計にさ…」 でも、何故か 「何か…すっきりしました」 「へ?」 嫌な感じはしなかった。 七瀬先輩はたぶん、全て知られてしまったら嫌われる、怖がられる、とでも思ったのだろう。 逆に怯えるように縮こまった七瀬先輩が、俺のその一言で、妙に間の抜けた声を出した。 「七瀬先輩って何となく謎が多い気がしてたんですけど…色々と驚かされて、何か、すっきりしました。やっぱり、お茶部って面白いなーって、改めて実感したというか…」 本心だった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加