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こんな、個性的な先輩達の集まるお茶部に入って、これから一体どうなる事かと思っていたけど、少しずつでも、この先輩達の事を知っていけばいいんだ。
そうやって、近付けばいいんだ。
「僕の事、怖くないの…?」
「そうですね…いつもの七瀬先輩を見てれば、あんまり」
いつも明るくて、元気な七瀬先輩。ちょっと裏があったって、別に俺は気にしない。
「ハ、ハッチん…ありがとう!超いい子ー!!ねえほら!女装してた甲斐があったよ!ギン!!やっぱり可愛いって大事なんだよ!」
…女装だった事は、衝撃的だったけど。
「はあ…良かったな金次」
三神先輩はやっぱり呆れたように溜め息をついた。でもその顔はどこか、優しかった。
「ギン!もうその金次って呼ぶのナシ!!幼馴染み特権で特別に許してやってるけど、学校ではやめろって!」
「あーはいはい。面倒だな…」「面倒とか言わない!金次なんて、可愛い僕には似合わないでしょ」
「あーもう解ったよ、七瀬」
「いきなり他人行儀だな!ナナでいいってば!」
「面倒くさ…」
「ギンー!!!」
相変わらず仲が良さそうな二人を見ていると、こっちまで楽しくなる。
そうやって、そんな先輩達のやり取りを微笑ましく聞いていると、
「…優しいな」
ふと、違う声色の言葉が、耳に入ってきた。
声の出所を追って見上げると、そこに居たのは黒崎先輩。解ってはいたけど、いつもと何かが違うような、違和感を感じた。
遠くを見つめて、心ここにあらず、という様子で…
「…俺も……」
先輩が何か小さく呟いた言葉は、よく聞こえなかった。
「黒崎先輩…?」
声をかけると、意外にも先輩はすぐに視線を俺へ向けた。
「……」
「…あ、あの」
その顔は特にいつもと変わらなかったけど、何か言いたそうにじっと見つめてくる先輩に、俺の方が妙にドキドキした。
確かに黒崎先輩は寡黙な方だと思うけど、何も言わずにじっと顔を見つめるのは、やめて欲しい!
先輩は特に整った顔をしているから、余計にドキドキする。
「なーに見つめ合ってんのー?」
極めつけに、そんな誰かの一言で、心臓が破裂するかと思った。
誰かって…七瀬先輩でも三神先輩でもない。
「いけない青春を開花させようとしているね!だがそこがいい!先輩はそんな君達を全力で応援するぞー!!!」
このハイテンションは、部長だ。
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