愛と理性の狭間で

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塾のドアの前 このドアを手前に引くと そこには光が待っている そう思うのに 私は一瞬手を引っ込める 光に手を伸ばす勇気が 私には今までなかった 勉強に来ている そう思うしか このドアを開けることができなかった 『こんにちは』 『ハルさん、こんにちは。今日はユウ君と一緒じゃないの』 微笑みながらの低音ボイス 社会担当のテツヤ先生 今日の出迎え担当らしい いつもは塾長だが 塾長代理はタカ先生 だから出迎えは先生方で回している 『彼女と話していたので、置いてきました』 『それはやきもちかな?』 『ふふっ、まさか。何とも思ってないですよ』 そう、何とも思っていない 私に被害がなければ なんて考えてる私は 薄情だろうか 『ハルさんとユウ君は幼馴染みなだけ、だもんね』 『・・・こんにちは、タカ先生』 こちらも微笑みながら だから私も微笑む もしかしたら私たちは 詐欺なんかをするときは ベストパートナーかもしれない こんなにも自然に 何もなかったかのように笑うのだから 『ただの幼馴染みです』 『なんかカレカノって雰囲気じゃないもんね』 『あー、あれだ。ライバル?』 『そうかもしれないです、受験生としても』 『負けるなよ~、俺ハルさんのファンだから』 『テツヤ先生に言われたら頑張らなくちゃ』 『俺も応援してるから』 『はい、タカ先生。ありがとうございます』 私達は秘密の共有者 儚き罪人 私はそれを受け入れたい それほどまでに タカ先生を好きだから
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