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びくっと身体が固まる。
そして反射的に顔をあげてしまった。
ここで顔をあげずにそのままめぐみの元に戻れば良かったのに。
反射的に、あげてしまったのだ。
「よお、来たね~。い、お、な、ちゃん」
そこには屋根裏の裂けた割れ目から、顔を覗かせる例の男の姿があった。
私は手袋に手を伸ばしたまま、硬直状態。
そして悟る。
やっぱり私をおびきよける罠だったんだ!
だけど……
なぜ無視できなかったんだろう!
ここに奴がいるのは予想してたはずなのに!
まさか上から来ると思わなかったから…。
「…どういうつもり?」
外にいるめぐみには聞こえないように小さく返す。
「さて、問題でーす」
相変わらず前髪をひょこひょこさせながら、彼はふざけた口調で言った。
「なんでいおなは、またここに来てしまったのでしょうか」
「なんでって…めぐみが手袋落としたからだよ!」
そう返すと「だめだなぁ」、と彼はわざとらしく首をふった。
なにがだめなんだ。
私は彼の一挙一動を見守るしかない。
「もし!それが必然だったと言ったら……?」
そしてまたわけのわからないことを言ってきた。
必然?
めぐみが手袋を落としたことが、必然だったと言いたいの?
確かにめぐみが手袋を落としてしまった以上、私は頼まれてここに探しに来るしかなかった。
友達が困っているのに放っておけるような人間じゃないし。
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